名古屋グランパスエイト、奈良クラブの再PKについて

■天皇杯で起こった珍事

2018/6/6に行われた天皇杯2回戦、名古屋グランパスエイト対奈良クラブは、延長でも勝負が付かず、ペナルティーマークからのキック(いわゆるPK戦)の末、奈良クラブが勝利しました。

が、しかし。

後に、主審のルール適用に誤りがあったことが判明します。
映像は見ていないのですが、どうやら、こういうことらしい。

奈良クラブの選手がPKの際に不正なフェイントを行う。
 ↓
キーパーには不正なし。
 ↓
主審は蹴り直しを指示。
 ↓
蹴り直して得点が認められる。


ここは分かりにくいところなのですが、キッカーが不正なフェイントを行った場合は、PKは失敗扱いになります。
試合中なら相手の間接フリーキックですが、PK戦ではその時点でそのPKは失敗で終了となるのが正しいそうです。

一部では、「このルールがきちんと適用されていれば名古屋が勝っていた」とする記事がありますが、それははっきり間違いだと言っておきます。
この時点の歴史が変われば、その後名古屋のPKがうまくいくかどうかも分かりませんので、勝っていたと言いきるのはおかしいことです。

(修正)
失礼しました。
この時点でキックが失敗と判定されていたら、その時点(PK4本目終了時点)で名古屋4-奈良2となっており、5本目を行う必要が無く名古屋の勝利で終了だったとのことです。
(修正ここまで)

そんな訳なのでやり直し、という判定になったようです。

■やり直しは妥当なのか。

僕は妥当では無いと考えます。
なぜなら競技規則に下記の条文があるから。

プレーに関する事実についての主審の決定は、得点となったかどうか、または試合結果を含め最終である。主審およびその他すべての審判員の決定は、常にリスペクトされなければならない。
プレーを再開した後、主審が前半または後半(延長戦を含む)終了の合図をしてフィールドを離れた後、または、試合を終結させた後は、主審がその直前の決定が正しくないことに気づいても、または、その他の審判員の助言を受けたとしても、決定を変えることができない。
(2017-18競技規則 第5条より抜粋)
主審の決定は最終的なものであり、「変えることはできない」と明記されています。

どうやら試合中、名古屋の選手・スタッフ含め、誰もこのルールの適用ミスには気づいていなかった様子。
なので現場では主審の指示のまま試合が終了してしまいました。
名古屋は試合中に審判団に確認を行うべきでした。
たとえ間違いがあったとしても終了してしまった以上、それが最終結果とするのが妥当と考えます。

■サッカーで再試合というのは例外中の例外

サッカーは野球やアメフトと違い、スピード感のある中で審判がノンストップで次々判定をしていかなくては行けないスポーツで、誤審も少なからずあります。
酷いものについては後日クラブが協会などの主監団体に抗議をすることもありますが、それにより再試合になると言うことはほぼありません。
せいぜい天候による理由くらいです。

これは想像ですが、再試合を選択肢に入れてしまうと、再試合が増えすぎてしまう可能性があるのではないでしょうか。

サッカーでは誤審は真摯に受け止め謝罪はするし、今後の改善に努めるとしても、終了した試合の結果が覆ったり再試合になったりすることはほとんど無いのです。
(主審に不正があった場合に再試合になったことはありますけどね)

今回のPK戦やりなおしは今後の日本サッカーに影を落とす、悪しき前例となってしまいます。
再試合の可能性を排除しろとは言いませんが、現場での抗議が無く試合結果が確定してしまった以上、この程度のことで再試合はないな、と思います。


---(以下追記)
PKのやりなおしについて、名古屋グランパスのサイトに下記のような記事が掲載されています。

 PK方式全体を一人目のキッカーからやり直し、3回戦進出チームを決定する。
※競技規則の解釈では、試合は延長戦を含めて「引き分け」という結果で終了しており、次回戦進出するチームを決するために、競技会規則で定めるPK方式を実施したものである。(次回戦に進出するチームを決める方法であり、PK方式は試合の一部ではない)
※試合の結果に直接影響を及ぼす場面での明らかな適用ミスであり、PK方式そのものが成立していないこととみなす。

確かにこのような延長戦を行う場合の試合結果は、延長戦でも勝負が付かない場合、公式記録は引き分けとなります。
また、いわゆるPK戦が、試合の一部ではないという点もルールに沿っています。
しかし、主審の決定は変えることが出来ない、というルールはどうなるのでしょうか?
かなり苦しい言い分に聞こえます。

上記の理屈は、「これがやり直しになるなら、もっと酷いのがあるから再試合にしろ!」とか「今後も再試合があるという前例になる」という批判をかわすためのものと思われます。

つまり、やり直すのは試合ではなく、次のラウンドに進出するチームを決定するための手続きだ、と。

だが、誤審でも適用ミスでもなんでもいいんですけど、問題はそこじゃなく、「主審の決定をくつがえした」ということであって。

まぁ、ハリルの件もあって、なんか日本のサッカーを巡る偉い人たちの考えることにはイライラしっぱなしですのでどうでも良いんですけど、一言で言うと、あり得ないですね。

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