苦悩するジェム・ハダー(スタートレックディープスペースナイン レビュー / EP4-3)

ディープスペースナインシーズン4の第3話。

ガンマ宇宙域での調査からの帰還途中で思いがけずジェム・ハダー(ドミニオンの兵士)に捕まってしまったベシアとオブライエンの話。
さらにそれと並行してDS9にまだ慣れないウォーフのエピソードも展開します。
2つはそれぞれ別進行で特に関連なく進むので、2つのショーとストーリーがセットになったエピソードとも言えますね。

(以下ネタバレ含む)

まず先にサイドストーリーのウォーフの方から。

DS9では戦術士官に転向し、金ユニフォームから赤ユニフォームになったウォーフ少佐ですが、エンタープライズで永年つとめた保安部のクセが抜けず、クワークが気になって仕方がない。
多分、艦隊士官ではないオドーが保安長官であることへの戸惑いもあってか、越権行為とは知りながら、さらにシスコにも止められているのに、クワークの監視を(勝手に)続行。
結局クワークの怪しい行動はオドーの潜入捜査に協力するための演技であったのだが、ウォーフの介入で失敗してしまう。

ウォーフは無能ではないのだけれど、エンタープライズの時から大局眼には欠ける面がアリ、DS9の視聴者にウォーフのキャラクターを紹介するにはうってつけのエピソードですね。
悪気はないのだけれど真面目にやり過ぎて失敗してしまうというのが如何にもウォーフらしい。
さらに、失敗についてオドーが報告書で言及しなかったのに、シスコに対してわざわざ謝罪に行くくそまじめさ。

エンタープライズでは、乗艦しているメンバーは一時的な客や捕虜を除き基本全員艦隊士官で全員同じ目的を共有する味方ですが、DS9は1つの都市でもあり、クワークを始め様々な価値観の中でバランスをとる必要がある環境で、ウォーフはそこに戸惑ったのだと思います。

その他にも、クワーク意外と良いやつ、オドーの有能さが(多分初めて)映像化された、オドーとクワーク意外と仲が良い、などサブストーリーだが見どころが多い。


そしてメインのストーリー。

ジェム・ハダーは創設者が兵士として創造した種族であり、ケトラセルホワイトという薬物を定期的に摂取しないと生きられないよう設計されている。
ある意味、薬物で縛られた奴隷兵という訳ですね。
ベシアとオブライエンが出会った部隊は、この状況から脱出しようとしている異端の部隊でした。
隊長が、その惑星に以前に不時着した際に、ケトラセルホワイトなしで生きられるようになったことに気づき、部下を連れて逃げてきたというわけ。
薬物依存を解消できた理由は不明だけれども、同じ環境にくれば、部下も解放されると思ったのだけれど、そうはうまくいかず。
困っていたところにドクターベシアが現れたので、薬物依存から脱するための研究をさせることにしたわけです。

ベシアは以前にジェム・ハダーの子どもをみたことがあり、ケトラセルホワイト依存のことを知っていましたが、研究は思うようには進まず。
人道目的とはいえ敵に手を貸すことを良しとしないオブライエンとも対立し、結局は完成しませんでしたが、ジェム・ハダーの隊長は2人を逃がしてくれた、という話ですね。


このエピソードは、新スタートレックでボーグの1対がエンタープライズに捕らえられた話を思い出させます。
DS9では種族感の考え方の違いや宗教などの扱いも大きくなってきていて、敵=悪という単純な構造ではないという点を強調することが増えてきています。

カーデシア人のガラックがDS9で割とうまくやっていたり、種族間では対立があっても個人同士は仲が悪くないというエピソードは多いです。

種族間の調和というのはDS9の大きなテーマですね。
敵でも助けようとしたベシア、艦隊の利益を優先したオブライエン、まぁ頭ではオブライエンが正しいとは思いますけど、こういうのは考えさせられますね。

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