VARがあるからといって、主審が画面をレビューすることは必須ではない

VARが一般的になりつつある中で、試合があるたびにちょっと今までになかった面白い状況が出てくるようになっています。

今回気になったのは、1819シーズン、UEFAチャンピオンズリーグ ラウンド16ファーストレグ、シャルケ対マンチェスターシティ。
この試合では少なくとも2回VARが入っているようです。

1回目はマンチェスターシティの先制点のシーン。
マンチェスターシティのディフェンダー(ラポルテ)のヘディングから始まった攻撃で先制しましたが、そのヘディングの時の接触がファウルでないかどうか確認したと思われます。
主審がVARと話をしていることを示すような通信機をジェスチャーしているので、VARと話をしているようです。

2回目はシャルケが1-1の同点に追いつくきっかけとなった、マンチェスターシティディフェンダー(オタメンディ)のハンドによるPK判定のシーン。
手にあたったものがハンドリングに当たるかどうかの判定でこちらは主審がテレビ画面のシグナルをだしているのが映像で確認できますので、確実にVARが関与しています。

■今回の特徴的なこと

今回、上記のいずれの場合も、主審は自分の目で映像をレビューしませんでした。
VARというと主審が画面に走り寄って映像を確認するシーンが印象的なのですが、今回はそれがなかったのですね。

解説の柱谷さんもその点にはちょっと違和感があった模様。

実はこの試合、主審がレビューするための映像機器に「技術的な問題」があったそうです。
要するに壊れてたってことかな。
だから見られなかったんですね。(^_^;)

■主審の映像レビューは必須ではない

まず言いたいのは、VARは「ビデオアシスタントレフェリー」の略であって、映像でリプレーを確認する仕組みのことを指すのではなく、ピッチ外で映像をリプレーして確認する審判員のことを指します。
(以下、主審のことをレフェリーと書きます)

流れとしては、
1.レフェリー、その他の審判員、ビデオアシスタントレフェリーが、レビューの必要があると感じたときに実施。
2.まずレフェリーとビデオアシスタントレフェリーは、通信機で会話
3.レフェリーは必要に応じて自分の目で映像をレビュー
4.その後、レフェリーが判定を下す。

ポイントは3でして、レフェリーが映像を自分で確認することなく、自分自身で見たものに、アシスタントレフェリー、ビデオアシスタントレフェリーからの情報を加えて総合的に判断し、判定を下すという選択肢があります。
これは「VARオンリーレビュー」と言います。

■どのように使い分けるか

競技規則によると、VARオンリーレビューはオフサイドなどの競技者のいた場所にかんするもの、ファウルの発生した場所の確認などに適しているとされています。
逆に、ファウルかどうか(当たりの強さなど)、ハンドかどうか(意図的かどうか)など、主観的な判断が必要とされる場合はレフェリー自身が映像を確認する「オンフィールドレビュー」がおおむね適しているとされています。

言ってみれば、例えばハンドがあったのは間違いないとして、それがペナルティエリアの中か外かくらいのことであれば、自分で映像見るまでもないよね、というような感じでしょうか。

■今回何があったのか

今回の場合、レフェリーはもちろん映像を確認したかったのだと思います。
しかし機器のトラブルでできなかった。
おそらくVARルームの方では問題なくリプレーが見られるようだったので、レフェリーは会話のみで情報を判断し、判定を下しました。
本来ならオンフィールドレビューにすべきところを、しかたなくVARオンリーレビューで行ったということですね。

ラポルテのヘディングのシーンはVARのテレビ画面のジェスチャーが確認できませんので、こちらは当初の自分の判定(=ノーファール)を採用したと思われます。
オタメンディのハンドについてはテレビのジェスチャーをしていますので、映像は見ていないもののそれに準じるものとしてビデオアシスタントレフェリーの情報に基づき、判定をくだしたということを示したようです。

いずれにしても映像レビューはツールであり、ビデオアシスタントレフェリーはあくまでレフェリーの補佐役です。
最終的に決定を下すのはレフェリーであり、与えられたリソースを適切に使っていれば問題がありません。
実際判定は正しかったと思うので問題はないでしょう。

機器の故障はどうしても起こりえるので、その場合にどうするかということはこれから整理していく必要がありそうです。

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