ガラタサライU-14の選手の故意にPKを外したプレーについて

トルコのアンダーカテゴリーの試合でちょっと変わったことがあったそうです。
起こったことは下記の通り。

ガラタサライの選手(攻撃側)がペナルティーエリア内にドリブルで侵入。
イスタンブールの選手(守備側)の腕が後ろから当たる。
ガラタサライの選手が倒れる。
主審がPKと判定。
ガラタサライの選手がPKを故意に外す。

動画がYoutubeに上がっているので張っておきます。




なぜこれが話題かというと、PKをもらったガラタサライ側の選手が、そもそも「自分はファウルを受けていないからPKではない」と主張したのだが、判定が覆らなかったのでわざと外し、それが素晴らしいフェアプレー精神だということで称賛されているわけです。

■フェアプレーかどうか

本来ファウルでないものが誤ってファウルとされてしまったと双方に意見の一致があるなかで、不当に得点を得たくなかったので、ルールの範囲内で解決したというのがこの行為。
確かに潔いと思うし、一般的な感覚としてフェアプレーとして称賛されるものだと思います。

しかし審判員としての視点からするとちょっと一概にそうとも言えないかなという気もしてしまいます。

■ファウルかどうかの判定は審判団がみた情報から判断される

審判団はその判定にあたって、選手やチーム役員の意見を聞くことは基本的にはありません。
自分たちの見えた状況から判断します。
もし意見を聞き始めてしまうと収拾がつかなくなってしまいます。

今回の場合は双方が合意しているし、攻撃側はもらえるPKを放棄しているのだからいいではないかという感覚は理解できますが、例えば八百長のようなものも考慮しなければならないし、やはり有利不利などの立場に関わらず、意見は考慮しないというのが本筋だと思います。

また、一般的に選手は審判ほど競技規則に詳しくないものです。
選手がファウルでないと思っていても、競技規則からみるとファウルであると審判が判定する可能性もあります。

今回の判定でも一連の流れの中で主審がPKであるとジャッジした結果については一定のリスペクトが必要であり、故意に最良ではないプレーを選択するという行為に少し困惑します。

■実際にファウルかどうか

もっとも映像を見る限り、僕にもこれはファウルには見えません。
腕は当たっているけど、きわめて軽い接触ですし、自分で足を引っかけてバランスを崩したように見えます。

ただし主審の視点からは腕が接触した部分は裏側だと思いますのでどのくらい強く接触したかは判断しづらいかと思います。
そのうえで、確実に接触があったことが確認でき、タイミング的にそれが原因で倒れたと見えるので、PKという判定になったのでしょう。

これはトップリーグの用のVARがあれば容易に解決した問題ですけどね。
ファウルではないと思いますけど、その場ではファウルと判定するのもうなずけるという状況です。

■プロならどうか

プロでもファウルのないところでPKをもらい、得点するということは多々あります。
実際「あれはPKではなかったと思うので得点して申し訳ない」というようなコメントを見たこともあります。
しかしプロはやはり判定がPKとなった以上、その後のプレーは最善を尽くすと思います。

■常に最善を尽くすのが真のスポーツマンシップという気もする

つまり、PKなど得点に直結してしまう誤審だとこのようにクローズアップされますが、細かい誤審というのは随所に存在しているわけです。
もちろん審判もその職務を適当にこなしているわけではなく、真剣に判定した結果です。
選手も審判も魅力的なサッカーというエンターテインメントのために全力を尽くしている中で、成功もあれば間違いもおこるのです。

今回の判定は間違いだったかもしれないけれども(正しいかもしれないけど)、それでも判定は判定として受け止め、その後は最善を尽くすというもの、1つのスポーツマンシップという気持ちもあります。

これはどちらが正解とも言えません。

ただ、言いたいのは、今回のような納得できない得点は良しとしないのも一つの素晴らしい行為であるけれども、誤審の後でPKで得点したからと言って不誠実とは僕は思わないということ。
判定は判定として終わった後、その後は最善を尽くす、それでいいと思っています。

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