VAR(ビデオアシスタントレフェリー)について真剣に考えてみよう

僕自身は少年サッカーの審判を子どもの付き添いでやってるだけのレベルなんで、VARなんてものにお世話になる機会は全くないんですけれども、競技規則にも記載されていますし、最近ルールの話では話題に上ることの多い単語ですね。

「ビデオアシスタントレフェリー」ということで、要するにビデオを使って主審の判定をアシストするための審判ということになるわけです。

■最近起こった2つの注目事例

今年日本でも広く話題になったような事例で言うとこの2つかなと思います。

(1)アジアカップ決勝 日本対カタールでの吉田麻也のハンド
(2)チャンピオンズリーグベスト16ファーストレグ アヤックス対レアル・マドリーでのゴール取り消し(オフサイド)

(1)は吉田が相手選手とヘディングで競った時、上に上がっていた手にボールがぶつかり、VARの結果ハンドリング(+警告)とされ、PKが与えられたというもの。
(2)はアヤックスの選手のシュートをレアルのキーパー(クルトワ)が弾き、そのボールをアヤックスの選手が再びヘディングでゴールに押し込んだものの、ヘディング時にクルトワの横にいた選手の位置がオフサイドとされ、ゴールが取り消されたというもの。

結論からいうと、僕は2つとも正しい判定であると思います。

■吉田のハンドリング

ハンドリング(いわゆるハンド)は、ボールを意図的に手で扱うことを禁止したルールです。
このシーン、ボールが手にあたっていることは間違いないので、意図的かどうかが問題になります。
意図的には見えないのにハンドとされたことで議論になってしまったわけです。

確かに僕もこの行為に意図があったようには見えません。
ただ逆に考えてみると、意図的にこの位置に手を置くことができるかどうかをふまえる必要があるでしょう。
もしこれがハンドでないという前例になると、次からディフェンダーは必ず手を挙げて跳ぶでしょう。
そう考えると、これは意図的に手でシュートコースを遮ったととることのできる行為です。

実は競技規則にも補足があって、ハンドを取るかどうかの判断基準の1つとして、「腕が不自然な位置にある」というのはハンドだと書かれています。
この場合はそう考えるとスッキリハンドだと分かります。

■アヤックスのゴール取り消し

アヤックス対レアルの場合も、アヤックスの選手がオフサイドポジションにいることは映像から確実です。
なので論点は、その選手がプレーに関与したかどうかという点になります。
これもVARの動画が何度も流れているので分かりますが、プレーしようと体がボールの方向に動いており、クルトワとの接触もあります。シュートの軌道の直下にポジショニングしていますので、これもオフサイドで正しいです。

■VARの誤審はあるのか

人間が判定することですので、100%間違いがないというものはありません。
ただし、VARでのレビューが実施された時点で誤審はほぼないといえます。

プレー中の判定と違って、何度もゆっくりを映像を見返し、VARとのコミュニケーションも行うことができる状態で、トップレベルの試合を担当する力量を認められた審判員が誤審をするということは、ほとんどありえないことです。

別に疑うことは構いませんけどね。
僕としては、それを疑う人には逆に聴きたいよね。
VARじゃない普段のジャッジなんて全然信頼できないレベルのものということになってしまうし、いったい何を信頼すればいいんですかと。

個人的にはVARは踏み絵だと思ってます。
VARの判定に毎回疑問を挟むような実況・解説者は偽物です。

■VARが問いかけるもの

ただし、アヤックスの例の方は、疑問に思う気持ちはちょっと分からないでもないです。
というのは、コーナーキックでゴール付近がごちゃごちゃ込み合っている状況で、しかもボールが何度も前後に動く瞬間の判定は、正確に判定するのが逆にほとんど不可能と思えるほど難しいものです。

今回のオフサイドは、VARがなければ何事もなく得点が認められて、議論にすらならなかったと思います。
それがVARに掘り出されてしまったので、何となく何もないところからオフサイドが生み出されてしまったような感覚に陥るのですよね。

しかしこうやってVARが入ってみると、なるほど正しく競技規則を適用するとこれはダメなんだと分かるわけです。

言ってみればVARは、正しいサッカー競技規則は実はこうだったんだよ、と教えてくれているのです。
今まで人間の目で判定できなかったレベルのファウルを浮き彫りにすることによって。
もしそれで、ちょっと厳しすぎるよねってことになるとすると、競技規則の方を変えていくしかない。

今まで判定できなかったプレーを便利な道具で判定できるようになって、それでサッカーの形も変わっていく、そういう時代になってきているということです。

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